けだるい午後の時間・・・・空は晴れ渡り、静謐な空気に満たされる。
ここには何もない。
不安も後悔も、怒りも悲しみも。
余分なものを全て取り払った、箱庭。
そこには、作った本人を示すもの以外には何もなかった。
外界での思い出さえも、製作者にとって不純物に過ぎない。
ここでの彼は全能であり、箱庭そのものだった。
悲しみや後悔、怒りといった感情を捨て去るのが彼の望みだったのだ。
たゆたう揺り籠の中でそっと眠りに就く。
かの桃源郷ほどではないが、そこそこの快適さは用意してあった。
傍らには古風のティーポット。
悠久の時間が流れていた。
もう、どこかを目指すのはやめよう。
もう、誰かを真似るのはやめよう。
そう決意して、この箱庭を作った。
誰にもその位置は分からず、誰もここを訪れることはない。
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